コミュ力は大人になって向上するのかという話
私自身の経験から述べると,コミュ力は経験と場数でコミュニケーションスキルとしては向上するが,苦手なシチュエーションを完全に克服することは難しいんじゃないかぁと思う.
最近ではITの発展により,独自の才能や技術,経験を活かし,コミュニケーションを最小限に抑えてフリーランスなどで仕事をこなすこともできるようになった.
一方で,普通の組織に属して社員として給料をもらっている人の多くはコミュニケーションの重要性を否定する方はそんなに多くないだろう.
では,そもそもコミュ力とは何なのかという話である.私は主に二つに大別できるのではないかと思う.
目的をともなったコミュニケーション能力
ビジネスの場で重要なのは間違いなくこのスキルである.
ビジネスの場では,各関係者(部署)と取引先など外部の人間と連携しながら業務に取り組まなければならない.
業務で必要なコミュニケーションをとる際には必ず目的が伴っているはずなのである.例えば上司への報連相,開発プロジェクトの進捗状況の確認,突然のトラブル対応などである.
上記で挙げた例は何れにおいても目的が伴うものであり,目的が明白であるなら,取るべき手段は自ずと絞られてくる.コミュニケーションでやり取りすべき情報の種類も見えてくるのだ.
つまり,コミュニケーションが苦手..という方でも,経験とスキルの習得で十分質の高いコミュ二ケーション力が身に着けられる.
仕事以外では全然しゃべんないよねあの人..とは思われるかもしれないが,少なくとも業務に支障が出来るような事態は避けられるはずだ.
コミュニケーションを目的としたコミュニケーション
所謂自分コミュ障なんで..というタイプの方で苦労するのはこういったコミュニケーションではないだろうか.
初対面の人と仲良くならなければならない,同窓会や社内の飲み会などで不特定多数の人間と接する必要がある,誘われたので本当は行きたくないがしゃーなしに出席する街コン..などである(最後の例は表面上の態度であることもある).
特定の人と打ち解ける..という事が必要なコミュニケーションであるが,これは中々にストレスがたまる.というのも,余りにも正解がないのだ.
会話の始まりで,この人とはこういう話題で盛り上がればOKといった攻略法を見出すことは難しく,ある程度探りをいれるために会話を続けなければならない.全く情報が無い中で初対面で話す必要があることもあるだろう.
「お疲れ様です.今日は寒いですね」
「ほんとですね.なんか東北では雪みたいですよ」
「お~そうなんですね.どうりで寒いわけだ(次,次,何,何聞けばいいのこれ)」
内向的な人は自分をさらけ出すのが苦手なので,相手に質問することからコミュニケーションを始めるのが良い.だが,それをするにしても相手のリアクションに応じて会話をコントロールしなければならない.
ひとによっては(私にとっても)本当にこれが難しい.会話が途切れると気まずくなり,緊張が進む.緊張すると頭の回転は悪くなり会話の質はどんどん低下する.負のスパイラルが高速で進み,そしていつしか二人の間で時が止まり永遠を感じるようになるだろう.
もちろん最近では雑談に対するノウハウ本など多数出ているし,参考にはなるのだが,如何せん雑談はその名の通り,正解やゴールは無いので,かなり臨機応変に対応しなければなない.
コミュニケーションを目的としたコミュニケーションに関しては本人の資質による部分も大きく,このシチュエーションを乗り切るスキルは向上しても,得意になったり好きになるにはよっぽどの訓練や意識改革が必要だと思う.
「そんなん考え過ぎだよ~もっと会話を楽しめばいいじゃん」という方には内向的な人間の苦しみは中々伝わるまい.酒で頭の回転を鈍くして臨めば,その場は切り抜けられるかもしれないが,翌日正気に戻った時の恥ずかしさや自身の発言の後悔によりベッドで足をバタバタすることになる.
内向的な人は深く,長期的に考える(時には悲観的に)ことが得意だが,外交的な人は瞬間的に情報を結びつけることが得意である.どちらも需要のある能力だが,コミュニケーションに関しては,後者の能力が生きることが多い.
では内向的な,人とのコミュニケーションが苦手な人は社会生活に向いていないのかというとそんなことは無い.先に述べたようにビジネスの場では利害が相手と自分の間で発生することが多いので,目的が存在する.
すなわちスキルを向上させることで最低限のビジネス上で必要なコミュ力を身に着けることは誰にだって可能なのだ.
むしろ,学生時代までのコミュニケーションにおいては,相手と楽しむことを目的としたコミュニケーションがメインであり,手段や目的の設定が曖昧なので,より高度なものだ..スキルの習得次第で生きるのが楽になることも想定できる.
私自身非常に内向的で,今でも人と長時間コミュニケーションをとると,頭痛や腹痛に悩まされることもある.だが,コミュニケーションの目的と手段を準備することで,必要以上なコミュニケーションや摩擦をさけることで随分楽になった.
最近では社内の懇親会などを欠席するのを容認される会社も増えてきたらしい.コミュニケーションはあくまでビジネスツールと割り切り,きちんと仕事をこなしアフターファイブで孤独の世界で好きなように過ごせばいいのではないだろうか.