あなたは子供を東大に入れたいですか?
「お父さん 私は東大に行きたい!」
「そうか。それではまず大江戸線で本郷三丁目駅を降り、しばらく歩くと赤い大きな門があるから,そこをくぐるともう東大だよ」
志を語る我が子にそんなジョークかませるなら①良好な親子関係を築いている②家庭内に深刻なミスコミュニケーションが発生している恐れがある、のどちらかである。
後者にならないよう重々気をつけていきたい。
さて、子どもを東大に行かせたいというと、ちょっと前までは如何に子どもの勉学面を親がコントロールしてあげるという事に言及していることが多かった。
東大に入ってさえしまえば後は万事OK!バラ色の人生!という前提を否定する事も無かったので、子供の精神面や肉体面での成長を無視してもいいような意見も書籍やネットに溢れていたと思う。
ところが最近では非認知能力とよばれるような,努力できる力,他人との協調する力,自律的に動く力など,数値では測れないような能力の重要性が認識されてきた.
最近の子供の成長に関わる本に関しても,ただ一人の成功例が万事に通用するような親の成功体験をかたるような書籍でなく,ある程度エビデンス(実証,検証された情報)を持って育児をかたるような意見が増えている.
子どもの自主性を伸ばし,自ら行動できる力をつけるのが現代社会に合った教育かも
例えば,少し前のベストセラーである「学力の経済学」では,幼児期に受けた高度な教育が,その教育を継続しなくても後々の学歴や社会人人生に大きな影響を与えることや,ほめ方,しつけの仕方の影響などをある程度規模の大きい実験で検証したものを根拠として示している.
洋書であるとこちらも有名であるが「GRIT やり抜く力」という書籍が流行していた.
このやり抜く力というのは昨日記事に触れたような理不尽を我慢する力ではない.
「目標を設定し,そこに向かって工夫しながら努力を継続する力」というものだ.
この本もある程度エビデンスベースでストーリーを展開している.
親の子供への接し方という点において,独裁的な親主導な子育てではなく,子供のほめ方,しかり方が如何に重要かという事を述べている.
即ち,子どもの自主性を尊重しながら,正しい方向へ導いてあげるのが良い子育てという事になる.
自主性を尊重するというのはとても大きな意味があって,自分で意思決定をする能力がつけられるという事だ.親が目標を設定してばかりでは,忍耐力は仮に教育の過程でついても一人で生きる力をもたないまま大人になり,大学に行く意義も見いだせないような状態に陥ってしまう恐れがある.
目標を設定されたら何も考えずに努力し続けてしまうという特性も問題であり,ブラック企業などの理不尽な環境に身を置いたとしたら,自分が壊れるまで働いてしまうだろう.
先の二冊はどちらかというと海外のエビデンスをベースとして論じられていた.
最後の一冊はそのもずばりのタイトルである.
「東大生を育てる親は家の中で何をしているのか」
こちらは日本の進学塾の経営者から見た,賢い子を育てる家庭に共通するものを論じたものだ.実証されたデータを使ったものではないかもしれないが,結果を出さなければならない経営者視点での多くの経験をまとめたという意味で,個人の成功体験よりは再現性(同じことを実施すれば同じことが起こる)が高いものなのだろう.
こちらも内容としてはやはり子供の自主性を伸ばすような家庭にすべき,というものである.
自主性を伸ばすというと,子供のやりたい放題,放任主義というように聞こえるがそうでなはい.
先に述べたように,自分で目標を設定して,成し遂げる力をつけるということである.
この本では具体的に何をすべきかということを論じている.先の二冊で自主性の有用性を感じ取れれば,この本で書いているようなことを実践すれば,お子さんはもしかしたら..日本で一番の大学に..いけるかも??
ただ,誤解しないでほしいのは,最近の終身雇用の崩壊など社会が大きく変わり,ただいい大学を出れば安泰という考え方を推奨はしない.
いい大学で優秀な人材と交わり,しっかり自分で自分の能力を向上させるためには自主性が大事,という事である.大学進学はその過程であるべきなのだ.
何を学び,どのように行動に落とせば,自分の描く将来にいい影響がでるかを考えられるようになれば,自ずといい大学に行けるだろうし,仮に不運にも大学受験に失敗しても自ら道のりを修正して目標に向かって走り続けられるだろう.